ここではBL漫画の良さを少女漫画との違いも少し合わせてお話したいと思います。
感情描写の奥深さ
BL漫画では、同性同士の恋愛に特有の感情や内面の葛藤が繊細に描かれることが多いです。同性の相手に対する気持ちに気づいたときの戸惑いや、「自分は普通じゃないのではないか?」という不安、周囲から理解されないかもしれないという社会的なプレッシャーが恋愛の背景として描かれます。
これに関しては異性同士の恋愛がベースとなっている少女漫画では、あまりテーマにされることのない部分かなと思います。
例えば、キャラクターが同性に惹かれることで、自己認識やアイデンティティについて深く考える場面が多く見られますし、気づいた自分の気持ちをどう受け入れ、相手にどう伝えるのか、そしてそれが自分の周りの中でどう理解されるのかをテーマにしている作品も多いです。
こういった複雑で繊細な心情が描かれることで、キャラクターたちが単なる「恋人」や「友人」を超えて、もっと個人としての深みを持ち、感情の変化を細かく追うことでキャラクターに感情移入しやすくなり、恋愛を通して自身の内面や葛藤についても考えさせられます。
友情と愛情の曖昧な境界
BL漫画は友情と愛情の間で揺れるキャラクターの心情や、その変化のプロセスに焦点を当てることが多いのも魅力です。
これは、友情から恋愛に発展することで生まれる微妙な感情の変化を楽しめるポイントでもあります。
たとえば、おすすめセレクトでもご紹介しているろじ先生の『親友の「同棲して」に「うん」て言うまで』のように、もともとは親友であった二人が同棲を始めたことをきっかけにお互いの存在の特別さに気づいていくというストーリーはBLならではの魅力を存分に発揮していると思います。
友情という一見無害な感情が徐々に恋愛感情に変わっていく心の過程を丁寧に描くことで、
その変化にドキドキしながら物語に引き込まれていくんです。
一方、少女漫画でも友情と愛情の曖昧な境界は描かれることがありますが、BL漫画の方がその境界をさらに曖昧に、時間をかけて描く傾向があるなと思います。
また、恋愛に発展することが「予期しない展開」として描かれるBL漫画は、「この二人はどういう関係になるの??」といった期待感を抱かせてくれ、物語に奥行きを持たせるのです。
社会的なテーマや自己認識の深堀り
BL漫画では恋愛の過程でキャラクターたちが自身や社会についての認識を深め、自己の在り方を再確認するようなテーマが描かれることがよくあります。
同性同士の恋愛では社会的な制約や偏見が絡むことが多く、キャラクターがその中で自分の立場や想いにどう向き合うかを考える場面が多く登場します。
例えば中村明日美子先生の『同級生』シリーズでは、高校生たちが初恋を通して同性への愛情という自身の感情に気づき、悩みながらも成長していく姿が描かれています。
このようにBL漫画は恋愛の楽しさだけでなく、自己と社会の関わりに対する葛藤や向き合い方もテーマにしているため、恋愛漫画でありながら人間ドラマのような奥深さを持っているのです。
少女漫画は基本的に異性愛を前提としていますが、BL漫画では同性間の恋愛が描かれることで、社会からの受容や理解の難しさといった周囲からの影響をテーマにすることができ物語の深みが増します。
特に日本の文化的な背景を考えると同性恋愛は伝統的にタブー視されてきた面もあり、そこに対する葛藤や挑戦が作品に独特の緊張感やリアリティをもたらします。
ジェンダーの枠に囚われない自由なキャラクター造形
BL漫画の多くはキャラクターの性格や役割が固定されず、とても多様な形で描かれます。
少女漫画にはだいたい「強くて頼りになる男性」と「少し控えめで感受性豊かな女性」というような男女の役割が暗に設定されていることがありますが、BL漫画にはそのような定型的な役割がないのも魅力的なところだと思います。
主人公たちは互いに自分らしさを大切にしながらも、対等な関係でお互いを支え合う場面が多く描かれています。
キャラクターの個性も自由に描かれ、感受性豊かな一方で男らしさを持ち合わせたキャラクターや、クールでミステリアスだけど内面には繊細さがあるキャラクターなど、固定されたイメージに囚われない描写が特徴です。
このような柔軟なキャラクター造形は、キャラクター同士がより自然に、互いの性格や価値観を尊重しながら関係を築いていくことができ、作品の可能性とリアリティを増します。
BL漫画を読むと自分自身がジェンダーにとらわれない愛の形やパートナーシップを知ることができ、様々な価値観に触れることができると思います。
作品ジャンルの幅広さと深み
少女漫画が恋愛や成長を中心に据えることが多いのに対して、BL漫画は恋愛だけでなく友情、家族愛、仕事、人生の選択などさまざまなテーマを描くことが多く、幅広いジャンルが展開されているなと感じます。
たとえば、先ほどあげた『同級生』シリーズでは、青春や学園生活、また社会人になってからの恋愛が丁寧に描かれ登場人物たちの人生が恋愛を通して深まっていく様子が描かれています。
また、『親友の「同棲して」に「うん」て言うまで』のように純粋な恋愛だけでなく、友情や共同生活がもたらす心のつながりもテーマにする作品が多いのもBL漫画の特徴です。
このように、恋愛を軸にしながらも多様なテーマを描くことで恋愛の枠を超えて人間関係そのものに思いを巡らせることができます。
BL漫画は友情や恋愛だけでなく、自己の成長や人生における大切な選択、社会との関係性など、様々なテーマに触れることでより幅広い人間ドラマを楽しむことができるのです。
さいごに
BL漫画の魅力は、恋愛の描写を通して人間関係の深層や自己認識を探求することにあります。
少女漫画と比べて異なる点や、BL漫画ならではの感情描写やキャラクターの多様性は新たな視点を見せてくれ、より深い物語体験をもたらしてくれます。
こうした点を知ることでさらにBL漫画の世界により一層親しみを感じていただけたらという思いと、ぜひまだBL漫画に触れたことのない多くの方に手に取っていただけたらなと思います。