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漫画『同級生』のあらすじと感想

blの金字塔、中村明日美子先生の『同級生』をご紹介します。

音楽を通じて心を通わせる二人の高校生の恋愛を描いています。二人の出会いから始まり、少しずつ互いに惹かれ合っていく様子が描かれます。

*一巻のネタバレを含む内容となります

あらすじ

物語は、クラスの中でも目立たない存在で真面目な優等生、佐条利人(さじょう りひと)と、明るく社交的なバンドマンで人気者の草壁光(くさかべ ひかる)の出会いから始まります。ある日、音楽の授業で行われた合唱の練習中、草壁はふとしたきっかけで佐条が一人で歌の練習をしているのを見かけます。

佐条は周囲からのプレッシャーもあり、歌が苦手であるにも関わらず一生懸命に練習していたのです。その姿を見た草壁は興味を持ち、自分から佐条に話しかけるようになります。
そして、草壁は佐条に歌の練習を手伝うことを提案し、二人は放課後の音楽室で一緒に練習をすることになります。

最初は戸惑う佐条でしたが、次第に草壁の明るさと優しさに触れ、心を開いていきます。
一方、草壁も佐条の純粋で一生懸命な姿に惹かれ、二人の距離は徐々に縮まっていきます。
草壁は佐条に対して友情以上の感情を抱き始め、佐条もまた、草壁に特別な感情を抱くようになります。

ある日、草壁は勇気を出して佐条に告白しますが、佐条は戸惑いと不安を感じ、すぐに返事をすることができません。それでも、草壁は佐条の気持ちを尊重し、彼のペースに合わせて進んでいこうとします。二人は、互いの気持ちを確認し合いながらも、少しずつ特別な関係へと進展していきます。

物語の中で、二人は互いの違いを理解し、補い合いながら、初めての恋に向き合っていきます。彼らの純粋で不器用な恋愛模様が、淡いタッチで繊細に描かれており、
青春時代の甘酸っぱい思い出や、初恋のときめきを感じさせる作品です。

第一巻は、二人の出会いと、友情から恋愛へと変わっていく過程を中心に描かれています。草壁の真っ直ぐな気持ちと、佐条の内気で繊細な心の動きが、読者の共感を呼び起こし、
二人の関係がどのように発展していくのかに引き込まれる展開となっています。

『同級生』の見どころと感想

繊細な感情の描写

『同級生』の最大の魅力は、登場人物の繊細な感情がとても丁寧に描かれていることです。優等生で真面目な佐条利人(さじょう りひと)と、明るく自由奔放な草壁光(くさかべ ひかる)の二人は、一見まったく異なるタイプの二人です。
しかし、互いに惹かれ合いながら、徐々にその心の中に隠された想いを明らかにしていきます。
とくに、佐条が初めて感じる恋愛感情に戸惑いながらも、それを受け入れようとする姿がとてもリアルで、共感を呼びます。

静謐で美しい絵柄

明日美子先生の絵は、美しく繊細で、まるで詩を読むような静謐さを感じさせます。
シンプルでありながらも、キャラクターの表情や仕草から伝わる微細な感情が巧みに表現されています。特に、二人が見つめ合うシーンや、触れ合うシーンは、言葉以上に強い感情をこちらに伝えてきます。背景や構図も美しく、二人の心情を表すような演出がそこかしこに散りばめられていて、その一つ一つが物語をより深く感じさせてくれます。

言葉に頼らないコミュニケーション

このお話では二人の関係が言葉に頼らずに進展していく場面が多く見られます。
目線や、さりげない触れ合い、そして沈黙のなかで交わされる無言のやり取りが、ふたりの関係性を深めていくのです。特に、音楽室でのシーンや、放課後の学校でのやり取りなど、静かな時間の中でそれぞれが互いを意識し、徐々に距離を縮めていく描写が秀逸です。
このような「言葉にならない」感情の表現が、とても強く印象的なんです。

現実的な青春の悩み

単なる恋愛というだけでなく、青春時代特有の悩みや葛藤も描かれています。進路に悩む佐条、周囲の期待に応えようとするプレッシャー、自分の気持ちに正直でありたいという草壁の葛藤など、誰もが経験したことのある「高校生ならではの」感情がリアルに描かれています。
これがとてもリアルで、言葉に出せない感覚、言葉にする勇気やまとまらない気持ちとか感情移入しすぎてしまいます。

音楽が繋ぐ二人の絆

物語の大事なキーとして、音楽が二人の絆を深める役割を果たしています。音楽の授業や合唱の練習を通じて、佐条と草壁は互いの存在に気づき、だんだんと惹かれ合っていきます。音楽は、直接言葉で表現できない感情の代わりになり、二人の距離を縮めるきっかけとなります。この音楽を通じたコミュニケーションが、ストーリーがより深みを持たせます。

純粋でまっすぐな恋愛描写

最後に、二人の恋愛がとても純粋でまっすぐであることが大きな魅力です。
草壁の「俺に会いたいでしょ」って言える真っ直ぐさや、嫉妬で思ってもないことを言ってしまうところや、お互いに小さな不安から卑屈になってしまう時もあるけれどそれに戸惑いながらも次第に心を開いていく佐条の姿は、心に響くものがあります。
読み終えたあとは明日美子先生のおっしゃるように”じれったくあまずっぱい青々した春のかんじ”
二人が互いに向き合い、成長していく姿が、切なくも温かい感動がいっぱいに広がります。

おわりに

『同級生』は、その美しい絵柄と繊細なストーリー展開、そして登場する人物のリアルな感情描写がかけ合わさった作品であり、初恋の甘酸っぱさや青春の儚さを鮮烈に描き出した傑作です。