今回は露久ふみ先生の異国の地でのオメガバースのお話『后宮のオメガ』をご紹介します。
*ネタバレを含む内容となります
あらすじ
ある雪深い異国の地に生まれ政略結婚のために遠方の国へ嫁いだ美しく聡明なオメガの王子イリヤのお話です。
イリヤの生まれたロメリダール国ではオメガは下等とされ奴隷か娼婦になるのが普通ですがイリヤは王家の人間で多少なりとも利用価値があるとされ今まで王家で生きて来れていました。
そんなある日、王から政略結婚の話をもらい「務めを果たせ」と遠方の地へ送り込まれます。
長旅の末に連れて来られたハヌ国は太陽が降り注ぎ、海に囲まれた自然豊かな国でした。
ハヌ国の後宮に入りさっそく明日の結婚式の準備が始まります。
イリヤに仕えることになったスゥヤに「お飾りの后に仕えてもなんの得もない」と皮肉を言い放ちますがスゥヤは「この国ではオメガはラタテ神の御遣い、イリヤ様はハヌ国にもたらされた奇跡です」と誇らしく語り、イリヤの結婚する王は「強く正しく誠実で太陽のような王でイリヤもきっと好きになるだろう」と言うとイリヤは「あり得ない」と返します。
何を言われてもイリヤは自分の地位と立場を忘れず冷静に冷淡にこの状況をみています。
ふと一人でいるイリヤの前に子どもが現れます。
後宮とは王と妃のみが入ることを許された場所なので王子の一人が迷い込んだのだろうと散策ついでに後宮の出口まで送ることにし、二人で歩いていると侍女たちが他国から来た王妃に仕えるなんて運が悪いと言っているのを聞いてしまいますが王子に「怒らないのか」と聞かれるも、言わせておけばいいと一蹴します。
そして翌日の結婚式、王が選んだという召物と宝石を身にまといながら、スゥヤに自分の国でのオメガの地位がどれだけ低いかや母親はオメガを産んだ恥から自害したことを伝えイリヤ自身も「王家の役割を果たし子供も産む、その代わり自分の魂だけは誰のものにもならない」と誓い結婚式に臨みます。
美しくなったイリヤがかしずいた先にいたのは王子だと思っていたあの子どもでした。
こんなに幼いうちに玉座につき年上のオメガを娶らされるとは、この小さき王もまた哀れまれるのでした。
『后宮のオメガ』の見どころと感想
オメガバースという世界ではあるけれどそれを忘れて感情移入して読み込んでしまう壮大なストーリーでした。
登場人物が魅力的
まず主人公のイリヤが美しくて聡明です。透き通るように白く美しい外見と芯の強い内面がとてもいいです、したたかとかではなく割とはっきりとした強さだけど賢い強さで、奔放でいるけれど必要な場面では相応の品格と振る舞いができ、優しさと柔らかさも持っているとても素敵な后です。
そんな后をさらに大きな愛と強さで守る王ハーリドもオーラがすごすぎてとってもかっこいいです。
お兄さんも好き。
そして侍女のスゥヤ、最初から最後まで本当に素晴らしい女性です。
第二巻のスゥヤで何度も泣いてしまいました。
絵がきれい
とにかくフルカラーで読んでみたいこの作品です。表紙と途中に数ページカラーのページがあるのですが南国の原色の中にイリヤの透き通った白が際立って本当に美しいです。
本編も白黒のはずなのに色が幾重にも見え、白も色んな白が見えて、空の高さや青さ、王宮の装飾の美しさまでなぜかキレイな色で見えるようです。
そして登場人物のセリフはシンプルでも絵がオーラや美しさを纏っていて雰囲気や明るさでどんどん世界に入り込めます。
こどの頃のハーリドの王の資質オーラは圧巻でした。
カラーブックみたいなの出ないかな、、、切に願います。
おわりに
異国のお話好きにはもちろんオメガバースもあまり強くないので、オメガバースを初めて読む方にもおすすめかと思います。
上下巻で長すぎず読後感も素晴らしいのでぜひ読んでみてください。