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作品紹介マンガ

漫画『スモークブルーの雨のち晴れ』のあらすじと見どころ


波真田かもめ先生による『スモークブルーの雨のち晴れ』は再会から始まる大人の恋愛を描いたBL漫画です。
元同僚でライバルだった二人が織りなす恋愛模様は仕事や人生の転機、そして互いを思いやる心の機微が丁寧に描かれており読み応えのある作品となっています。

*第一巻のネタバレを含む内容となっています。

あらすじ

主人公の吾妻朔太郎(あづま さくたろう)は38歳の元製薬会社のMR(医薬情報担当者)。かつてはエリート社員としてプライドをもって仕事に情熱を注ぎ、活躍していたものの現在は無職で日々を持て余している状態です。
仕事を辞めてから自分の居場所さえわからなく、どこか投げやりな生活を送る中、ある夜に危険な夜遊びに身を投じてしまいます。

そんな彼を助けたのが、かつての同僚でありライバルだった久慈静(くじ しずか)でした。静はかつて製薬会社のエースとしてNo.1の売上を誇り、朔太郎の前に立ちはだかる「手強い競争相手」として記憶に刻まれた存在です。しかし、8年ぶりに再会した静はその頃のキラキラとした雰囲気から一転して、どこか気だるげな長髪姿の「別人」のように見えました。

現在は医療翻訳家として働く静は久しぶりに再会した朔太郎を放っておけず、自宅に連れて帰ります。
行くあてのなかった朔太郎は静の家に居候を始め、二人の共同生活がスタート。
再会からの何気ない日々の中で、二人は少しずつお互いの「変化」と「本当の姿」に気づき始めます。

二人の再会は、ただの偶然ではなく「お互いが互いを必要としていたタイミング」で起こったものだと感じさせられます。
朔太郎は静に救われたことで、自分の人生を見つめ直すきっかけを得ます。
そして静の家で新しい生活を始める中で、自分も翻訳の勉強を始めたいと思うようになります。
この変化は、朔太郎が静と出会うことで「自分を変える一歩」を踏み出す決意を固めた瞬間のようにも思います。

第一巻の終盤では二人の間に漂う穏やかな空気の中に、徐々に「恋」の気配が見え隠れします。
ライバルだった頃には見えなかった互いの本音や弱さに触れながら、二人の距離は少しずつ縮まっていきます。

『スモークブルーの雨のち晴れ』の見どころと感想

1. 大人の恋愛のリアルさと切なさ

『スモークブルーの雨のち晴れ』は、20代の青春ラブストーリーとは異なり、30代後半という大人の恋愛がテーマです。
二人の関係は甘いだけではなく過去のトラウマや現実の壁が立ちはだかることで一筋縄ではいきませんが、それでも、お互いを思いやる気持ちや何気ない日常の中で生まれる愛情がとてもリアルに描かれています。

例えば、朔太郎が翻訳の勉強を始め静の仕事を少しずつ理解しようとする場面。
これは単に恋愛感情だけでなく、「相手の世界を知りたい」という深い思いやりの表れです。一方で、静もまた朔太郎の無鉄砲なところや不器用さを受け入れ、寄り添おうとします。
大人同士の恋愛だからこそ描ける、この温かさと切なさが大きな魅力です。

2. 再会から始まる新しい関係

この物語は再会からスタートする恋愛が描かれています。かつては仕事上のライバルでありながらお互いに尊敬し合っていた二人。
再会したことで新しい一面を知り、過去の関係を乗り越えて特別な絆を築いていきます。

静の穏やかな性格や優しさに触れながら、朔太郎は自分の弱さをさらけ出せるようになります。一方で、静もまた朔太郎の明るさやまっすぐさに支えられる場面が多く、二人が互いを補い合う関係性がとても心地よく感じられます。

3. 日常の描写が生む癒し

この作品のもう一つの魅力は、二人の生活がとても「普通」であることです。
派手な出来事は少ないものの、静の部屋での共同生活やふとしたよくある瞬間や空気感、
一緒に買い物に出かける場面など、日常のささやかなシーンが丁寧に描かれています。
これが、ふと癒しとなり「こういう関係が理想」と思わせてくる力があります。

4. 医療翻訳というユニークなテーマ

静が携わる「医療翻訳」という仕事も、本作のユニークなポイントです。専門性が高く、時には命に関わる仕事である翻訳の世界がリアルに描かれており、単なる背景設定以上の存在感があります。また、朔太郎がこの世界に興味を持ち、新しい挑戦を始める姿勢は、彼の成長や変化を象徴しており、読者の共感を呼びます。

5. 繊細で美しい絵柄

波真田かもめ先生の繊細なタッチの絵柄も、この作品の魅力の一つです。特にキャラクターの表情や仕草が非常に丁寧に描かれており、線が言葉以上に多くを語ります。
朔太郎が静を見つめる視線や、静が不意に見せる柔らかな笑顔など、細やかな感情の機微が伝わってきます。

おわりに

『スモークブルーの雨のち晴れ』は、大人の恋愛のリアルさや温かさをじっくりと味わえるBL漫画です。
再会をきっかけに新しい人生の一歩を踏み出す二人の物語は、恋愛だけでなく人生そのものを見つめ直すきっかけとなっています。

恋愛の甘さだけでなく葛藤や成長も丁寧に描かれているため、より深く作品に没入でき、
静と朔太郎の静かで穏やかな関係性が、忙しい日常に癒しをもたらしてくれることでしょう。

この作品は恋愛漫画としてだけでなく、「大人の生き方」を考えさせられる一作として、多くの女性におすすめです。